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当時に比べるとITが進歩し、情報処理能力が上がり、コストが飛躍的に小さくなっていること、パソコンや携帯電話、ゲーム機などのネットワークにつながる端末が当時とは比較にならないほど普及し、会社はおろか個人単位での囲い込みが可能なことなど、大きく条件が変わっていることに気をつけなくてはならない。 ここでは、条件は変わっても基本は変わらないという立場から、sISP立案のステップの説明を行いたい。
sISPと呼ばれる方法論は、戦略的情報システムが取り上げられた当時、「セイバー」などの成功例をもとに、コンサルティング会社やIをはじめとするシステム・インテグレータ(SI一システム構築・保守業者)が体系的にまとめたものであり、これは会社ごとに存在する。 ただし、基本的な進め方という意味ではあまり変わらないため、主なステップを取り上げて説明したい。

きわめて簡略化して流れを示したものである。 この図を使ってITコンサルティングのステップを説明すると、最初に「初期仮説立案」(目標設定)というボックスがある。
これは第一章のコンサルティング・プロセスで説明したように、どういった姿があるべき姿なのか、あるいは何をやれば競争に勝てるかを最初に考えて目標を設定するポイントである。 世の中や業界の動き、自社に関する知識がある程度あれば、仮説立案は可能であるが、知識や材料がないと難しいため、このあと説明する「外部環境分析」、「内部環境分析」をある程度進めてから行うこともできる。
ただし、本格的な調査の前には仮説をもっていないと非効率に陥るため、早い段階で仮設立案することが必要だ。 仮説自体は、「外部環境分析」や「内部環境分析」を進めるにしたがって修正され、更新されていくものである。
そのため、最初の段階ではあまり細部にこだわらなくても構わない。 更新されるものと区別する意味で、予備的な調査をしたあとに立てる仮説を「初期仮説」と呼ぶ。
また、この段階で目標値の設定を行う。 なぜなら、目標をどこに置くかによって、その後のプロジェクトのアプローチが異なってくるからである。
たとえば、業務量の削減10%をめざすのと、5O%をめざすのでは、考えるべき改善策がまったく違ってくる。 前者は現状をベースにできるが、後者だと抜本的な改革を検討しなくてはならない。
仮説立案のためには、問題を構造化する必要がある。 仮説立案とはある意味で、現象としての問題点を掘り下げて原因を特定し、変革のための課題を導き出す過程と、課題を解決することで問題点をなくすという逆の検討過程を繰り返すことでもある。
仮説立案の段階で、これから自分たちは何を仮説とし、何を証明するかを確認したあと、本格的な調査と分析に入る。 その一番目が「外部環境分析」である。
これは、いわゆる競争分析にあたるもので、何をやれば競争に勝てるか、成功するために最も重要な要因は何であるかを明らかにすることが狙いである。 基本的なビジネス・モデルと競争の原理を分析するための手法として4C分析がある。
4C分析の詳しい説明は次章で行うが、自社、顧客、協力者間のビジネスがどういう仕組みになっているかを理解したあと、競争相手に対して優位に立つための成功要因を探るのである。 そのためには、ビジネスを行う市場を定義し、競合各社の動きを踏まえて、コア・コンピタンス(核となる強み)をどこに置くかを検討する。

各社の動きと言っても現在の動きだけでは不十分だ。 情報システムが稼働でき、実際に使えるようになるまでは、少なくとも半年、場合によっては一年以上の時間がかかる。
その間には、競合相手も進化する。 構造的な要因に目を向けると、経済状況や技術進歩、規制の動向など、競争の前提条件も変わる可能性がある。
それらを見越して、二年、三年後、あるいはもう少し先に何を実現できていれば、自分たちは競争に勝つのか、何が重要かを探るのである。 具体的な手法のひとつとして、重要成功要因分析を次章で説明する。
二番目が内部環境分析である。 ここで言う内部とは企業の内部、あるいは企業グループの内部をさしている。
対象としては、人材、資金、モノなどの経営の要素と呼ばれるもののほかに、情報やノウハウ、情報システムのインフラなども対象となる。 社内にどういうものがあって、現在どういうところで使われているのか、非効率なところなど問題としてすでに認識されていることは何かを、他社との比較も併用しながら明らかにすることが目的である。
初期段階で行う基本的な作業としては、財務諸表の分析、業務の棚却し、組織の役割分担や要員数の確認、現行の情報システムの調査などがある。 本格的な調査は、前章で説明したように証明すべき仮説によって様々な手法を使いやすくして利用する。

活動基準原価分析やワーク・サンプリング(時間分析)などもそれらのひとつである。 企業全体の活動を鳥眼的に見るという意味で、ビジネス・システム分析を次章で説明する。
あるべき姿とは、競争優位を獲得する上で「こうありたい」という目標になる姿である。 それも漠然とした姿ではなく、計測可能な指標や「OOができる」という表現で語られる。
その姿を検討するときに気をつけることがある。 それは、外部環境分析や内部環境分析の結果として、様々な制約事項が明らかにされていたとしても、それにとらわれてはいけないということだ。
最初の段階でやることは、制約をまず外して、あるべき姿を描くことである。 基本的に、企画を立てる段階では、制約事項から入るのはよいこととは言えない。
「制約を考えなければ非現実的な姿になる」という見方もあるが、どういう状態がベストか、競争に打ち勝ち、成長を続けられるかを考え、その姿と現実のギャップを明らかにすることを始まりとすべきである。 なぜなら、現状からくる制約条件のなかには、お金で買えるものや、経営者が決断すればなくせるものが結構あるからである。
筆者自身、メーカーの経営企画室で働いていたころ、「成長市場に足がかりをつくるためにこんな事業を始めるべきだが、事業部制だと担当部署をどこに置くかが問題になるな。 母体にできそうな子会社もないし。
ノウハウをもった人材も十分とは言えないし、諦めるしかないか」と悩んでいたところ、上司に「君がまず考えるべきことは、何をすれば儲かるかだろう。 社内に資源がないのなら、社長に言って会社をひとつ買ってもらえばよい。
事業部制が邪魔ならルールを変えればいいじゃないか」と言われて、目から鱗が落ちる経験をしたことがある。 現状に存在する制約とは、最終的にどれだけの効果が見込めるか、そのためにいくら投資が必要でどのくらいのリスクがあるか、という投資対効果に基づいて決定されることなのである。
そこで最初は、企画者自身の価値観で、発想に制約を課さず、フリーハンドであるべき姿を描くところから始める。 あるべき姿に関しては、これが唯一ということはまずありえない。
二通りや三通りのオプションが出てきて普通である。 現在取引している顧客のどの層をターゲットにするかを検討するとき、ひとつのオプションは上得意の優良顧客に集中して、きわめて絞り込んだ顧客を中心に商売をしようという戦略である。

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